毒見役としての僕の為に/高梁サトル
 
{引用=
ごらんよ、僕たちの家が燃えている
帰る場所を失くした孤児は、何処へ向かうのだろうね



顔をあげて 僕の最後の一滴まで飲み干して
ゆるやかに 死に絶えてゆく世界で
胎児の産まれる 慶びを語り合おう
一欠けらのパンをわけあって 家族の夢を見よう

夜は互いの 痙攣する心臓に耳を澄ませて
引き裂かれた朝を 出来る限り優しく迎える準備をする
落とした鎧戸が 僕たちの静寂を護ってくれるから
まどろみの草原を駆けながら 灰色の風に笑おう



架空の名を持つ 美しい仮面が並ぶ部屋で
僕たちだけの 至高の約束を考えよう
あらゆる愛を綴った 書物を破り捨て
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