シーニュとしての擬似死/高梁サトル
 
の向こう側は 無だ
「MON.VERRE.N’EST.PAS.GRAND.MAIS.jE.BOIS.DANS.MON.VERRE」
私は 多くを望みはしない



冬のうちに 一度死のうと思う
花売りの少女たちが 清らかな笑顔で男を誘う
そんな季節が 来る前に
受粉を待つ彼女らの 華やかな色彩
あれは衰退の前兆 死臭は甘いと知っているか
過敏になった神経に その芳香はあまりにもきつい



鳶色の鳥が耳元で「弱虫」と囀っている
もしもおまえとの再会の場所が 白洲であったなら
私はすぐさま この喉笛をかき切ろう
「愛していた」などと告げて 赦しを乞うたりしないよう
それが厭わしいほどの 私からの愛の証だ


戻る   Point(10)