シーニュとしての擬似死/高梁サトル
{引用=
おまえは死への憧憬もないまま 籠を抜け出して
まだ春も遠い 凍える大地へと羽ばたいていった
空高く飛翔することも出来ない そのか弱い翼で
導きの手もないまま 朽ち果てる身体は
誰にも知られることなく 静かに黙殺されるのだろう
しかしそれは これ以上ない程に自然な事なのだ
・
私は疑問を抱くという自惚れに 陶酔し過ぎていた
ヒロイックな顔をして 真理を求める者たちの
その紅潮した頬を 美しいと信じていたのだ
しかし今でも変わらずある 彼らへの愛は
私の歪んだ 悪趣味としてのそれであることを
ここに 告白しておかなければならない
・
ヴェールの向
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