唾と蜜ーー参考資料⑦/robart
これ以上登場人物が増えるのを僕は望まない。
そして、これから僕を含む何人かが壇上を去ったとしても、おそらく代わりの誰かはやってこないだろう。
だから、今から話す男については、ひとつの比喩と考えてほしい。物語を円滑に進めるために必要なある種の冗長性。複数の鏡が互いに互いを反射して空間を埋め尽くしているのなら、ともかくどれか一枚鏡を割ってしまえばいいのだ。
話をはじめよう。
あるとき男は自分の脳内にひとつの共和国を作り出した。それは百万の国民をもつ、ある程度の歴史と文化を備えた国家であり、彼の日常のすべてが寓話的に、あるいは直接的に影響を与えることによって、そしてそれらが反映されること
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