SMOKE/高梁サトル
 

煙草の煙の向うに霞む景色だけが角膜にやさしく映る
海にも山にも離れた場所で
満たされようと何かを(何でもいい)探している
そしてそれは至極まっとうなことだと言い聞かせて



暖炉に薪をくべて手紙を投げ込んだの
すぐに灰になってしまったわ
期待なんて簡単に燃えて消えるのね



温石の代わりに子猫を抱いて眠る
きつく縋れば死んでしまうような小さな命を
自分の暖をとる為に愛しむ
「私にはこの温もりが必要なの」と涙を流して
よく出来た三文芝居みたい
なんて、滑稽なの



生きる為に何かを愛する
その残酷さに耐えられなくなることがある
清らかさって一体何なのか
時々、分からなくなるの
そういうときの私は
きっと生きている資格がない



熱い紅茶で火傷した舌で
煙草をふかすとピリピリと痛んで
それでも止められない

唇が寂しいと嘆いても
キスは望まない

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