動揺/葛葉もなか
どうせなら木っ端微塵に
影も形もなくしてしまって
幻想に揺すぶられずにいられるように
手前勝手な妄想が記憶の隅をくすぐって
わたしの足を止めるのだ
手前勝手な妄想はどこまでも都合よく
わたしの心を酔わすのだ
亡霊のように わたしは記憶の中を彷徨い続ける
木漏れ日に抱かれ秋風に撫でられ
優しさに包まれた記憶の森に酔い痴れる
失ったものはない
悔いが残るはずもない
あるべき姿に帰ったのだ
なのに未だ 前触れもなくふいに痛みに襲われる
重ねた確かな真実が 優しすぎる思い出が
その研ぎ澄まされた記憶の針で
気紛れにココロを突く
どうせなら木っ端微塵に
記憶の森さえ一瞬で消滅させてしまうように
気紛れにココロに針を刺しこまなくてすむように
影も形もなくしてしまって
戻る 編 削 Point(3)