動揺/葛葉もなか
 

どうせなら木っ端微塵に

影も形もなくしてしまって

幻想に揺すぶられずにいられるように



手前勝手な妄想が記憶の隅をくすぐって

わたしの足を止めるのだ

手前勝手な妄想はどこまでも都合よく

わたしの心を酔わすのだ


亡霊のように わたしは記憶の中を彷徨い続ける

木漏れ日に抱かれ秋風に撫でられ

優しさに包まれた記憶の森に酔い痴れる



失ったものはない

悔いが残るはずもない

あるべき姿に帰ったのだ


なのに未だ 前触れもなくふいに痛みに襲われる

重ねた確かな真実が 優しすぎる思い出が

その研ぎ澄まされた記憶の針で

気紛れにココロを突く



どうせなら木っ端微塵に

記憶の森さえ一瞬で消滅させてしまうように

気紛れにココロに針を刺しこまなくてすむように

影も形もなくしてしまって







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