夢の競馬場2/花形新次
に溶け込みたいと思っている。そのためには馬券を買う必要があるんだ。買ってしまえば、当たろうがはずれようが、レースをみようが寝てようが、僕は虹色の絵具競馬場の風景に溶け込み、一体になっている気がするんだ。(馬券を買わない者は傍観者でしかない。つまり額縁の外。)
そしてできることなら『湘南ホースニュース』とは違う僕自身の思い描く風景になりたいと考えている。
この日も『湘南ホースニュース』本紙予想の圧勝だった。すべてのレースが終わった頃には僕はすっからかんになっていた。日が翳って、急に寒くなってきた。侘しさが増幅するような寒さだ。僕は競馬場をでて、朝来た道を駅に向かって歩きだした。そんな僕は、まだ風景の一部だ。やがて駅に着き、観光客の中に紛れ、帰りの電車に乗り込むにつれ、風景は薄れ、やがて消える。
そして僕の日曜日は終わる。
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