白道めぐり/古月
行き会へる不幸を悼むものあれど
生まれの幸を思うものなし
*
嗚呼
漸く伸ばしたって泥濘みの底の
銀色が三日月の切先なら
それで何に成るわけでもなし
虚の中は暖かくやわらかで
しとりと濡れた肌に心地良い
女が云う
ねえ
奥へ往きましょうよ
だってこんな処では然も
覗いてくれと云わんばかりでしょう
喩い
食うや食わずの日を知らぬとて
何の罪でありましょうや
そんなに苦労が偉いと云うなら
川原の乞食にでもなれば善ろしいのに
女の吐息が鼻の奥をくすぐると
目の玉の奥の深い処が痺れ
白い靄の中から差し出される
長い長い腕
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