私の愛したサテュロス/高梁サトル
ど
私はその下手な朗読を何倍も愛していたのよ
時々、隣に私がいることを確認するように
キスをせがんで息苦しいくらい抱きしめる
「朝になっても消えてしまわないで」
その一言にどれだけあなたの孤独を感じたか
・
鳴くのはいつも雄ね
埋まることのない空虚感の中には
常に稲妻が放電されていて
いつも身の危険と隣り合わせなのでしょう
薔薇の蕾を切ることにも心を痛める私には
嵐の夜にひっそりと
あなたが傷付かないよう祈るばかり
・
それでもあの頃、
全てを捨てても
あなたに賭けようとしたことは真実なの
愛し合う日々が報われるなら
有意義な結末なんていらなかった
今更言うのはずるいかしらね
・
「愛してる」
それ以上の言葉が見つからなかったの
「愛してる」
それ以上の発想が生まれなかったの
一日がたちまちに過ぎていった
我を忘れるほど
夢中になりすぎていたのね
・
「星冴ゆる 凍える頬の 柔らかさ」
真冬の夜にお互いの頬を温めあった
あんな優しいだけの恋、二度とできない
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