蓄音器から聞こえてくる歌劇に
あなたとの情事を重ねて
センチメンタルに浸る
贅沢に愛を貪りながら
少し破廉恥かしら、と頬を赤らめて
けれど、
いつまでも花の少女ではいられないものね
冷めた紅茶に角砂糖を入れても溶けないように
お気に入りのティーカップも
吉屋信子の『花物語』も
そろそろ戸棚の奥にしまうわ
ロマン主義はもうお仕舞い
誰にも知られたくない叙情は
散っても枯れない花弁のままでいさせて
星空に憧れる人間が多いのでしょうけれど
地上に恋する星たちだってたくさんいるの
淡い夕暮れ時の窓際に肘をついて
ゆっくり目を閉じて耳を澄ませば
聞こえてくるはずよ
何万光年先の過ぎ去った少女たちの声が
途切れ、途切れに
「愛してくれて」「ありがとう」って