君の匂いが風に吹き消される中で、僕は考えていた。
シッダールタとゴーウィンダが別れた日を。
僕らは唯一を失い孤独に震えるだろう。
その震えは誕生の産声の後の、それと同じものであるのだと、君が想像できたらと。
ああ、君の肌以上に僕を癒やすものはなかった。
君の沈黙以上に僕を瞑想させるものはなかった。
ついぞ打ち明けられなかったこの感覚を、共有できていたのだと、信じよう。
僕は言った、君は行くのか、と。
君は言った、僕は行きたい、と。
僕らは永久の別れに、あからさまな恋に、始まりの孤独に、泣いた。
君は言った、本当は行きたくない、と。
僕は言った、僕を捨てて行く君を誇りに思う、と。