お風呂場で考え事をする/なき
 
 雪が降った。私の住んでいるところはいつも降らないので、少し嬉しい。ただ寒いよりも、明日の朝、屋根が真っ白になっていたり足元が凍ってつるつるしたりするのが少し嬉しい。
 でもそれはきっと非日常だからなのだと、いつもより熱いお風呂に浸かりながら考える。
 風呂場の窓を開けると、雪の結晶の塊が真っすぐに柔らかく落ちていくのが網戸ごしに見えた。しん、とした気持ちになる。雪の降るのを見ていると、小さな頃に何度も読んだ『小さなおうち』という絵本を思い出した。作者は忘れてしまった。取り残される、小さなおうち。窓から湯気が出ていって、熱いお湯で赤くなってしまった二の腕にひやりと冷気がこぼれる。静かに窓を閉め
[次のページ]
戻る   Point(1)