ひとつの宇宙 /
服部 剛
指紋を眺めると、そこに宇宙があった。切
株を覗くと、そこに宇宙があった。時計を
見上げれば、秒針の音が絶えず響いていた。
日常の風に紛れていつも周囲に渦巻いてい
る、それぞれの宇宙。肩を並べ揺れる草々
に埋もれながら、夜空に瞬く星々を仰ぐ時、
そっと手をあてる胸の内に、億光年のいの
ちを宿して渦巻いている、ひとつの宇宙。
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