鬼追/楽恵
追われるものを追うものの
山彦越える、相聞歌。
闇にまぎれ
主は言問う、
「戸は開けぬ、知らぬ、存ぜぬ」
読み人知らず。
送り火迎えて遥か
節句の里。
柴刈り、道拓けて
今か今かと待ちわびる
春を月にも、分け与えよ。
拐された娘たち。
峠を染める薄紅、醸す麹の液の匂う
松明を焦がす身棚の奥深くひそやか隠された。
「いよいよ朱色か」
夜半すぎ
来訪神の衣を帰らず。
老い先の残り火奪う
梅の香。
赤鬼青鬼の行列、道連れに踊り嘆く
「そなた名は」
呼びかけて答えず。ついに帰らず。
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