お月見の夜 /
服部 剛
夜の冷たいベランダに出て、丸い月を眺
める。誰にも云えぬ悩みを白い吐息で呟
けば、胸底の容器に濁り積もった毒の塊
が、少しずつ、少しずつ、蒸発し、夜の
静寂に吸い込まれ、いくぶんか、胸の重
みは軽くなる。遠い遠い昔から、僕を知
っているかのような、のっぺらぼうの月
のひかりよ(透きとほった天使の言葉よ)
空っぽの僕の容器に、降り積もれ。
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