労働/攝津正
 
でもない、金になる当てがあるでもない、単なる習慣である。だが攝津は、ブログを書くことこそ自分の天職だと考えていた。社会生活を送る上では、自分は仮面を被って進む。快活な好青年を演じざるを得ない。だが、インターネットでは、真実を記す。それが攝津の生活の二重の格率だった。だからブログでは性のことも、同性愛のことも隠さずに書いた。
 だが攝津は、正直に言うと、自分が同性愛者だと信じていたわけではない。同性と性交している時ですら、自分が同性愛者だとは思えぬ。だから攝津は、「自称」が性別なり性的指向を決めるというひびのまことの説に懐疑的である。攝津は「自称」同性愛者だが、実際には曖昧な性欲しか持ってはいない
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