詩人の涙 /服部 剛
 
在りし日の詩人は、独り 
無人の原野に佇む影となり 
夕空に巡る星々を 
澄んだ瞳に、映している 

(この哀しみの地上こそ、我が故郷・・・) 

頭上を掠める鳥達が 
翼を広げ、舞い上がる 

(この悲嘆に夕暮れる世界こそ、我が故郷・・・) 

密かなる、慰めの風歌が 
金の稲穂を、吹き渡る 

在りし日の詩人は 
遠い昔日から今も 
密かにこちらを、視ている。 

(おぉ涙よ、涙よ・・・) 
こちらに何かを囁くように 
ひときわ瞬く遥かな星がひとつ
詩人の頬を伝う滴に、灯る 







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