「えいえん 佳子1997 冬」「鳥の唄 2000 冬」全面改定版/ダーザイン
増し、雑踏の中に出るのを怖がり部屋から出ることが出来なくなった。外に出ると、佳子の足元に伸びる自身の影は血のように赤いのだと。部屋にこもっていても誰かが佳子を責める声が聞こえることがあるようだった。佳子は誰もいない荒涼とした海辺に立つ電波望遠鏡のパラボラのように、大宇宙の無限と対峙し、私たちを守ろうとしていたのだと思う。海触崖の上にどこまでも連なる藁色の丘また丘。見上げれば、転がり落ちてしまいそうな深く青い空。海岸線に沿い、丘陵の上には白い風力発電機の塔がどこまでも見渡す限り太古の遺跡群のように立ち並んでいる。足元の草叢には地を這い咲き乱れる小浜菊の群落。風に飛ばされた佳子の麦藁帽子を追って丘陵の
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