【批評祭参加作品】つめたくひかる、2?江國香織『すいかの匂い』/ことこ
 
れに対して、『すいかの匂い』における「つめたい」が不安的な、マイナスイメージを抱かせる場面で用いられていることは、やはり意図的であり、物語を読者に印象付ける上で重要な役割を果たしていると言える。夏のうだるような暑さの中、ふいに触れる「つめたさ」。幼いころの記憶を手繰りよせたとき、ビビッドに脳裏に浮かぶ、心を乱されたときの、生々しい「つめたい」という感触、。『すいかの匂い』は、11人の少女の夏の記憶として、実に巧みに「つめたい」という感覚を描いた作品だと言えよう。

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