【批評祭参加作品】つめたくひかる、2?江國香織『すいかの匂い』/ことこ
は、「あげは蝶」の最後のほうの場面であり、帰省する途中の新幹線の中で出会った「女」とともに、「私」は両親から逃げようと一度は決意するものの、結局出来なかったところである。足がすくみ動揺する「私」の目の中に、「キオスク」の「冷凍みかん」が飛び込んできている。
{引用=
海で、父の教え方は厳しかった。
毎年、最初に海に入る瞬間がもっともいやだ。ひたひたとまず足のうらが、砂の上で泡立っている水に触れる。ついで足指、足首からふくらはぎ、膝。このへんまでで、上半身にはたちまちとり肌がたつ。水に足をとられて歩きにくい。
(中略)
水からあがると母が待っていた。バスタオルをひろげ、にっこりと
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