【批評祭参加作品】ひろげた本のかたち(佐藤みさ子)/古月
さほど受けなかったのではないかと思う。印象を言葉で表現しようとするとどうしても、不安だとか、怖いとか、陰のあるイメージをあてはめたくなる句だが、だからといって不快ではなく、どこか懐かしい、童話的な風景でもあるようにわたしは思う。
ここにあるものは、とても不安定なものだ。ぐらぐらした、あるかないか分からない景色。たとえば、いま自分が目で見ている景色は、もしかしたら目をつぶっている間だけ歪に変容しているのではないか……、視界に納まらない背後では、なにか恐ろしいことが起こっているのではないか……、そして、自分が正常だと思っている日常は、ほんとうは正常ではないのではないか……。あらゆるものの実在が疑わ
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