奥行きのある記念碑/楽恵
 
青空模様のタイルに覆われたような
ガラス天蓋のあるコンコースを歩く
ひとけのすくない午後の駅には
のどかな旅愁が満ちている
上空は強い風が吹いているのだろう
立ち止まった路のうえを
雲が落とした淡い灰色の影が
次から次へと過ぎ去ってゆく
天蓋を通過した陽の光が
支え枠に区切られたまま降りてきて
体のなかをすり抜けていく

この土地をこうして独り去って行き
そしておそらくもう二度と戻ってこないという
淋しくも優しさのある予感を
足もとから知ることになる
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