正しい森/都志雄
 
有って無いもの。
糾弾と依存とを行き来して、
「ぼくら」はどちらの虜囚だっただろう。
吹きさらしの冷たい玉座に
老いた王子は逃亡の果て 独り帰り着く。
だがそのとき再び、
冬のおそい夜明けにも似た清明さで、
遠い日に埋めた泉が湧き返る。

無くて有るもの。
未来を思い出す、のか、如何なる約束のグラウンドに立ち、
それとは知れぬ巨大な渦の中、
人知れず息づく立ち枯れに静脈を重ね。
呑まれるのか呑みこむのか支払期日よろしく。
だがそのとき初めて、
たかだか数千年の損益計算の、精緻に赤い袋小路に向かって、
憑かれたように慌てふためきながら、美しく飾り立てる亡霊たちの姿まで
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