【批評祭参加作品】日々のひび割れ −石川敬大『ある晩秋の週末のすごし方が女のおねだりで決まる』評−/大村 浩一
という音が入り調子を整えている。
この「だ、けれど」の読点も、前出の「と、女がいった/言葉に」と同様の、
意図的な言葉の躓きである。そしてここでも「女が」の意図的な際立たせが行
われている。そのほか「一点」を重ねたり、助詞によって各行をつないでいく
ことで主人公の逡巡を上手く表現している。
生活の疲れの滞留を「溜まった水槽の堆積」のイメージに重ね合わせる鮮や
かさは、最終連のジャスコ同様、この作者の優れた表現力の一端と見ていい。
# 愛犬ミルクと女と究極の選択になれば
# 泣く泣く
# ぼくは女をとるだろう
#
# あしたの予定は
# これでもう
# 決まったよう
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