透明で無害な煙草、倍速で行われる会話、無目的的な快速電車/robart
駅前のカフェでサリンジャーの短編小説を読んでいた。ブラインド越しでも西日がきつく、窓を背にする席を選ばなかったことを後悔した。木製のイスも座り心地はよくはない。空調も若干効きすぎている。要するに読書には向かないシチュエーションだ。
店内では、8月もそろそろ終わりだということで、長袖の客も散見できた。BGM代わりにかかるラジオからは、デビューしたてのアーティストが、いかにも女好きな印象のDJに卑猥な質問を浴びせかけられ苦笑いしていた。僕はコーヒーに手を伸ばし、一口だけ飲んで、すぐにテーブルに戻した。煙草を買い忘れていたこと気づいたからだ。僕は右足が上になるように足を組みかえ、手の甲で眼鏡を
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)