冬の博物館の前で/robart
 
て実際、らくだも、うさぎも、チュロも、みんな受け入れている。もう認められている。戸惑いなんてない。もう、これしかないって感じだ。サンクトペテルブルク。ペトログラード。レニングラード。そして再びサンクトペテルブルク。」
「なにそれ。へんな呪文ね。でも、うれしいな。」彼女の頬と耳は寒さのせいですっかり赤くなっていた。僕はポケットに手をつっこんだまま、首を右、左、右、と動かした。風が少し吹いた。
「あなたにも、名前をつけていいかしら?」
「僕に?」
「もちろん、あなたに。それとも、もうなにかあだ名とかあるの?」
「ないね。子供のときから、あだ名なんか一度もつけられてことがない。」
「なら、なら、つけてもいい?私素敵な名前考えるから。」
「そうだなーーー」僕は久しぶりに心から笑った。本当に本当に、久しぶりに。
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