「天使の島」/月乃助
なんかとちがう
陽の光は、ゆらめく衣の光跡に
白金の帯を残して、静かすぎるほど まぶしいほどに
波のしじまがそこだけは、キャット・ウォークさながら
ゆらめいて 打ち上げられた流木を静かにたたいていたり
大蛇のようなブル・カルプの蠢くようなかたまりから
潮を打ち消す 死人のようなにおいが立ちのぼっていたって
【 海のかおりなど、昔とすこしもかわらない 】
天使の消えていったあとはうつくしく
冬の海岸線の冷たさになじめずにいても
波が奏でる 葬送曲を思い出す絶え間ない音だって
海鳥達のえさをもとめる貧欲な眼差しだって
浸蝕され やせ細った地層のもようだって
不確かな影をなげかけることなどできやしない
だからただずっと
確かに飛んでいった天使の
うしろ姿をみつめながら
新たな年の穏やかな海を
いつまでも
みつめて
いる
朝
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