白く濁った世界/あ。
 
こぼれたミルクは飾りボタンの溝を泳いで
くるくると光を跳ね返していた
いつまでたっても混ざり合うことはなく
胸を埋めるような匂いが辺りに漂い
大気ばかりが乳白色に濁っていた


窓の向こうを飛ぶツバメの姿が優しく見えたのは
雛鳥の甲高い声が響いているからだろう
感覚はそれぞれがさらさらと流れる小川で
知らないところで知らないうちに重なっている


前日見た夢は大体ひとつくらいは覚えている
現実的なものなんて殆どなくて
大抵が霞がかったようなもので
こうして白い香りに包まれていると
遠くに置き忘れてきた記憶が歩み寄ってくる


すっかり染み込んでしまったセータ
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