妄想三角比/都志雄
それでも高一の時分はまだ、「単純であってくれ」という虚しい願いとともに、理数系の授業も比較的真面目に取り組んではいたのだが。
たしか高一の一学期の終わりごろだったかと思う。数学で新たに《三角比》の単元に入った時のことだ。期末試験が近付いていたこともあり、私は珍しく授業に集中しようとしていた。やがて近隣の大学院の博士課程だとかいう非常勤講師がやって来て、粛々と「講義」を始める。サイン、コサイン、タンジェント。当然私はついてゆけない。一体なんの因果でこのような情報操作をやらされなければならないのか、という疑念がどうしても先に立ってしまう。そしてふと、数学の取っつきにくさの一因は、?θ、π、Σ″
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