凪が終わる時/within
凪が終わる時
授業が終わると道人は真っ先に教室を出た。いつもは軽音楽部の部室で、友人達ととりとめのない話をして、ベランダから演劇部の発声練習を眺めながら、本間裕子の姿を追いかけるのだが、今日はそういうわけにいかなかった。ひと気のない自転車置き場の空気は幾分乾いていて、冷たい空気が埃を研ぎ澄ませていた。しかし暗い影二つが、待っていた。道人の自転車に跨った岡沢は、道人の姿を見つけると、にやにやと口元を緩めて、欲望だけの思想のないからっぽの目で笑いだした。すぐ脇には岡沢にいつも金魚の糞のように連れ立っている原野が、猛禽のような目をして道人を睨んでいた。
道人が岡沢達と目を合わさないように自
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