【140字小説】青猫他/三州生桑
 



【ホームレス】
歯が全て抜けてゐて聞き取りにくかった。「帰りたい? どこに?」東京から金沢まで帰るのに五百円欲しいって? 今日はクリスマスだ。私は硬貨を一枚渡す。五百円で買った嘘。すると老人は「せ、せ、千円…」と言って雨に濡れた手をまた差し出した。強烈な異臭。金沢っていい所なんだらうね、爺さん。


【クリスマスケーキ】
近所のパン屋でクリスマスケーキを買った。クリスマスが終はってから。「ああもう持ってってくれよ。三百円でいいよ」クリスマスにケーキを食べなきゃいけないなんて一体誰が決めたんだらうね…てなことを猫のクロにボヤいてみる。クロはケーキの匂ひをちょっと嗅いで外へ出て行った。…いただきます。




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