連詩「四季」 竹中えん 夏嶋真子/夏嶋 真子
 
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花が散るころにわたしは女でした。女になってしまい、
鉄鉢の中の百枚の花びらが
蝶のように羽ばたき、遠ざかるのを眺めた


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花びらのひとひらを虫ピンで留めた音が肺に響いた。
ひらひら、(蝶、が泣き出したのね 、)
降り止まぬ雨の匂いを女の標本として嗅ぐ。


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空が燃える頃、海の匂いを嗅いだ。
だれかが泣きながらそれは涸れたといい、わたしは信じず
海のほうへと歩いた。花びらで出来た蝶を携えて


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永い間、眠ったままの蝶、その亡骸を貝殻に封じると
やがて蛹になる。夕凪を通り過ぎた浜辺で、
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