【140字小説】美少年他/三州生桑
 
にしてよ」


【そば屋】
天ぷらそばを食べてゐた友人が急に白目をむいた。「おい、大丈夫か?」食べかけのエビ天の尻尾が痙攣してゐる。おかみさんはカウンターで居眠り、親父は店の片隅で落語の練習中。友人の鼻の穴からヌルリとそば星人が這ひ出てきた。「ワレワレハ地球を征服スルタメニ…」…私はきつねうどんを平らげた。


【売春婦】
事を終へ、一息ついた所で女が煙草を吸ひつけて渡してくれた。私は吸はないのだが。女の内腿には見事な緋鯉が彫ってあった。風呂で泳がせる趣向だ。サイドテーブルに文庫本が載ってゐる。「そりゃ何だい」「前の客が置いてったの」ヒルティの眠られぬ夜のために? 私は笑った。女は煙草に火をつける。





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