セント・ニコラス/月乃助
 
子どものためにいるなど
誰が決めたのさ

長いローブを引きずるように、
白い髭を 凍てつく星空にゆらす

あなたは太った 赤ら顔の
エルフなんかじゃないはず
赤い毛皮の
違う そう、別な老いた、
やせ細った体に
きびしい眉根の 彫りこまれた
その皺の顔で 
聖なる夜に身を粉にする

杖を突きながら 夜の街をめぐるなら、

幸せな 人の よろこびを
それだけを 楽しみに

背にした袋に
世界の願いをつめこみ 
重そうに 背負ったりする

いつからか、取って代わられた姿に
それでもため息をつけば、
いきどおることもない

雪を踏みしめる
その音ばかり
さく さく さく
街に 小さく 小さく
響き、

火のおちた
煙のあがらぬ
煙突を見上げ、
手をのばす 降るほどの星空に、

飛び去る
トナカイの橇にのって 空を疾駆する
自らを ほんの少し 
夢みながら





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