ベース/ふくだわらまんじゅうろう
ベース、寝かせてよ
どんなに泣いても
詫びても取り戻せない
あなたとの蜜月
ベース、泣かせてよ
この月夜の雨は、もう
あがらないのかもしれないのだから
見知らぬ街の
見知らぬ仕事場で
人肌の紙管を抱いて
あなたを思い出す
ねえ、この雨の降りしきる
世界の向こう側に何が
あなたのその磨りガラスの窓の
向こうに何が
あなたを片時も
忘れたことなんてなかったんだ
だけどそのことに、わたし
ぜんぜん気づいていなかったんだ
だからこの街で
この仕事場で
人肌の
雨の向こうで
もう一度、あの
空のかなた
晴れ渡る
或いは夕焼け
の坂の上か
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