朝の儀式/窪ワタル
冷え切った校舎の裏
ささくれ立った言い訳をした日
嘘をつくのは単なる処世術ではなく
空気と同じなんだと信じることにした
地球は今この瞬間も律儀に回っている
無数の嘘を繋ぎ止めながら
卸したての朝を連れて
昇ったばかりの陽はいつもながら苦い
顔を洗う 寝起きの顔は特に好きになれない
入念に歯を磨く
歯並びがいいのは父譲りで
これだけは密かな自慢
おばさんになってから後悔したくないから
メイクは極薄め
目元にビューラーを運ぶときは二の腕が堅くなる
やっとコンタクトに慣れたばかりなのに
髪を梳かすたびに母を恨む
机に向かって予習をする
よい子のレッテ
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