12月のボーイズラブ特集 副題:知と愛の接触/済谷川蛍
 
和らげてくれた。三枚の便箋から、わたしに対して抱いている憧れや思慕、また信頼感、尊敬の念、そして相当の勇気や覚悟が感じられた。とにかく年下の者が年上の者に本物の愛を証明するために説得力を出そうと四苦八苦していた。
 なるほど、わたしは確かに彼の期待に応えられる数少ない種の人間かもしれない。こんな奇人にはこのへんじゃちょっとお目にかかれるもんじゃない。しかしとてもじゃないが、わたしは彼と付き合う器ではない。というのも、わたしはれっきとした人格破綻者だからだ。彼のような、知性と共に、捉えどころのない健全な精神を具えた人間というものはほとんど奇跡のような存在に近く、後者の清潔な性質を持たないわたしは
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