X 29.50/月乃助
 

赤い屋根のお庭には、
たくさんの死骸が
ごろごろと横たわっていました
胴体を切られた者達が、

七重八重になって、乱雑に
ひしゃげた腕が
その間に差し出されては、
修羅場をいっそう凄惨にしている
ものほしそうな栗鼠とカラスたちの
わずかな姿だけが、弔問の 
うごきまわっては、
あとには、雨の葉を打つ
静かさだけが
帳(とばり)をおろすように
やってきていた

どうしてこんなに
ここは香りがよいのでしょう、
忘れさしてくれる
新鮮な

亡くなったものたちの
芳香は、雨のなかでその強さをまし
いつまでも、いつからも

   ◆ {ルビ=ほら
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