Maria/月乃助
うつむきながら
老婆があゆむ
右の手にしたほそい杖
すりきれたコートにつつまれて
冬の濡れた芝の上を
さまようように
あきらめたように
差し出す雑誌に
日本のことがかいてあるのだから、
もっておいでなさい
時事を知りなさい
マリア、
しわがれた手に
ふるえるような
風の ないだ林では、
すべてが許される
あたしは、静けさに
おびえていたのです
あなたの
笑顔は
わずかな光りを
集める
ここは、寒くない
それを教えてくれるためにやってきた
遠くで、黒い犬が駆けています、
ああ、あれも
あなただって
いつかは、ここに来ること
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