どこかにあるかもしれないもうひとつ別の7月4日/robart
 
西日はカーテン越しに部屋へと漏れ、時折風も吹き込んだ。ちぎれ雲が長い時間をかけて窓の中の空を横切っていった。雲は影を帯びていたが、下の部分は少し明るかった。やがて太陽はほとんど山の後ろへ隠れてしまい、空は群青色から黒へと変わっていった。太陽が完全に沈んでしまうと、かわって星がいくつか瞬きだした。星の数は数えられるほどしかなかった。長い時間が経ったが、その間も博士は夜空を見つめて坐ったままだった。ただ呼吸のために胸がわずかに動くだけだった。月が窓の枠内に現れ出した頃、流れ星がやにわにすっと窓の右上部から墜ちてきた。博士は腰を上げ、流れ星に飛び乗ってどこかへ行ってしまった。
博士の部屋には石と、小瓶と、いくつかの家具だけが残った。シルクのカーテンは月の光を気持ち良さそうに浴びていた。
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