濡れた帽子/服部 剛
「LePoet」という
木彫りの文字が
ゆらり、夜風に揺られている
その看板を下げた店の
隣の家の竹垣に、ひっかかり
雨にぐっしょり濡れた
毛糸の帽子
店の洋燈に照らされ
縁の下に落ちそうな
涙の珠(たま)を、光らせながら
地面に影を、伸ばしている
手のひらをのせて
(ごめんな・・・)と撫でてから
深夜の雨のざわめく道を
僕は通りすぎてゆく
振り返った遠くに
店の洋燈に照らされた
毛糸の帽子
「LePoet」の小さい文字が
ゆらり、夜風に揺れている
戻る 編 削 Point(1)