濡れた帽子/服部 剛
 
「LePoet」という 
木彫りの文字が 
ゆらり、夜風に揺られている 

その看板を下げた店の 
隣の家の竹垣に、ひっかかり 
雨にぐっしょり濡れた 
毛糸の帽子 

店の洋燈に照らされ 
縁の下に落ちそうな 
涙の珠(たま)を、光らせながら 
地面に影を、伸ばしている 

手のひらをのせて 
(ごめんな・・・)と撫でてから 
深夜の雨のざわめく道を 
僕は通りすぎてゆく 

振り返った遠くに 
店の洋燈に照らされた 
毛糸の帽子 

「LePoet」の小さい文字が 
ゆらり、夜風に揺れている 




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