立つ勢いの豚/カンチェルスキス
製本工場に着くと
まず掲示板の自分の名札を見た。
忙しい時期は学生のバイトのやつらが
掲示板の前に群がった。
若い女の声と声。
キムラって誰。話したこともないよ。
どうしよう、暗いやつだったら。
ラインごとに分けられた。
おれはいつも第九ラインに自分の名札を見つけた。
そして他のラインには若い女もいたが
こっちは違った。
ワキガのきつい男だった。
いつも赤と黒のチェックの粗い生地の長袖シャツを着ていた。
若いのに白髪まじりの長髪で、歯に食べ物の黄色いカスが目立つやつだった。
ベルトコンベアから流れてくる
奥さま向けのファッション
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)