幸福論。/aokage
 

学校の帰りに、風の音に耳を澄ませる。
街の喧騒も、誰かの話し声も、全てがどこか遠い。
肌を撫ぜる風が愛しくて、空を仰いだ。
昼と夜の間。青と朱が交じる。
雲は、一つも浮かんでいない。
太陽と月が、同居している。

陽と陰の狭間の時間。

こんな時、大気の唄は聞こえてくる。

私の幸せは、此の世界に生まれた事。
此の世界に、生きているという事。
呼吸ができるという事。
風を感じるという事。
暖かいと感じられる事。
寒いと感じられる事。
自分が幸せだと、感じることができる事。
私には、ヒトが争う理由が解らない。
ヒトが傷付け合う意味が、解らない。
私達は、既に幸せを手にしているのに。
私達は、此の世界に生まれたのに。
何を恐れているのだろう。
争いを生んでまで守りたいものとは、何なのだろう。
私達は、いつも全てを共有しているのに。
何故、壊してしまうのだろう…。

今この時も、何処かで誰かが泣いている。

何処かで誰かが、苦しんでいるのだ……。




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