マザー/ゆるこ
その両手に零れている
内臓の薫りは
私の生まれた日に死んでしまった
柔らかいこころだった
水滴が肌を湿らせるように
じんわりと温もりが呼吸する
世界になったんだ、私
色彩が視界を埋めていく
マザー
吐いた吐息が芽吹くように
小さいてのひらをやんわりと開く
その未知に
瞬いたのです
マザー
駆け抜けたばかりの風が
誰かの模索した地図だけ抱えて
私へと突き付けるのです
いるかの夢
その手で開いた先に
どんな結末が立ち塞いでいようとも
わたしはただ、
マザー
空想のあなたの名を思うのです
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