夜会服のままで君は/ふくだわらまんじゅうろう
夜会服のままで君は
ふと
こちらを振り向いて
グラスをちょっと
肩越しに
秘密の微笑み
誰も
知らない
ぼくは貴女の
背中に夢中
ドレスの衣擦れが
悪戯に
夜風のワルツが
アブサンの明滅が
酩酊の底の底で
夜会服のままで君は
裸馬に跨って
踊る
踊る
夜を飛び越えて
どこまでも
どこまでも
ぼくは君の裸馬に
跨って
祝祭の花火
火花の宝石たち
噴水の飛沫
シャンパンの悪ふざけ
スカートの中の秘蹟
女心のテトラコード
夜会服のままで君は
ちょっと
こっちのほうを振り向いて
グラスを少し
揚げたのさ
そうさ
その一瞬の軌跡のために
ぼくは夜会服を着て
ぼくは百一編の
詩を書いて
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