残像/松本 涼
 
わずか一小節程の残像を残して
君は飛び立ってしまった

それは砂粒のように粉々に散らばり
私の生きる所々にふと
瞬間を運んでくる

まるで他愛もない他人との会話の中に
あてずっぽうに出かけた景色の中に
余り物で作ったメニューの中に
通りすがりの歌の中に


君はもう穏やかな場所まで
辿り着いただろうか

それともまだ裏路地あたりを
宛てなくうろついているのだろうか


どちらにしても
今度はもう少し

自分に優しく
生まれておいで

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