「ゆりと兵士」/月乃助
夏のそらばかりが 身をせめる
南風の吠ゆる 島の岬に
母のかたみの 赤い櫛で
髪を梳く
罪を乞うでなく
罰をあがなう 身にもあらず
まばゆく うれしそうに
紺碧色に待つ 海をみつめ
ながら
髪を梳く
いやしき鬼畜をのがれ
穢されない
逝く夏
を 背にして
岬から 鳥の飛ぶ
せいいっぱい つばさを広げ 黒髪をなびかせ
ただ、まっすぐに 落ちていく岩波の
いきどまり
終わりを夢見て
羽ばたく わたしたち
ひとり また ひとり
ひとり… ひとり
…ひとり
蒼海に
むすめ
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