『手紙』/あおい満月
わたしには、きっと
読まれることのない
手紙を書いている
わたしには、きっと
云われることのない
ことばを書いている
進む指の感覚がもどかしい
ひかりを知らない子どものように
愛ということばを
おくることは容易いけれど
わたしがわたしに
愛をおくる術が見つからない
だから
あなたに手紙を書くときは
いつも戸惑う
戸惑う
幸せの記憶だけを
細い糸を手繰るように
手探りで拾い集める
ぎこちないメロディーが
この部屋にひろがる
手のひらの画面のなかで微笑む
幸せのサインに向けて
わたしのなかの
あらん限りの
愛のことばを
愛の詩を
2009.10.22(Thu)
戻る 編 削 Point(5)