「落陽」(3/3)/月乃助
 
 気象台横のごつごつと張り出した岩の上に、よじ登るようにして立ちあがれば、海峡と町の景色が突然足の下にひろがる。そしてその先、海峡の向こうには、白い岩山の山脈がゆったりと雲の下に姿を見せ広々としている。
 見下ろせば、目の下の海岸線は、大きなスプーンを寝かしたような半島が海峡に突き出ている。そこは、この町に初めて白人達が訪れてきた時に船を泊めて上陸をした場所。そんな話を思い出す。
 夏のまぶしいほどに輝く海峡や陽をきらめかす山脈は、今のこの季節には見られはしなかったが、
「へえ、すごいじゃない。きれいなところだね」そう、彼は景色に心を奪われてしまったのか、娘の顔を見ずに言った。その言葉は娘を
[次のページ]
戻る   Point(2)