「落陽」(1/3)/月乃助
青天と光る海峡、それに雪を頂いた銀嶺の山脈がその向こうに、それぞれが自分の存在を謳歌するかのようにあって、娘の目に焼きついてしまった。
娘は、どうしてもこの景色を彼に見せたかった。
一緒にいる青年は娘より二つ上で、この冬には日本に帰る。
秋に取り残したユニットを取ると短大を卒業するが、日本での就職もすでに決まっていた。娘は十九。まだ、大学に入ったばかりで、ここの短大を卒業した後は、やはりこの町にある総合大学の三年に編入を考えていた。そのため、娘が帰国するのはまだ四年も先の話だった。
(つづく)
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